商法大改正 「新会社法」成立
VOL.1 主な改正点
新しい会社法が成立しました!(平成17年6月29日国会可決) 新会社法の施行は平成18年5月頃からと見込まれています。 今回の改正は、近年、毎年のように行われた、現行商法の会社法規定の改正とは異なり、新法典の制定という大改正です。 「新会社法」の制定は、古くなってほころびが生じている一方で、新しい事態に対応しきれなくなっている現行商法「第2編会社」を、現在の状況に即応できる新しいものにするという、「会社法の現代化」を目的としています。 本稿では、この大改正された「会社法」の施行前に、改正の概要を紹介していきます。 VOL.1においては、主な改正点を簡単に紹介します。 【形式的な改正点】 条文の現代語化 カタカナ文語体⇒平仮名口語体にし、見やすくなっています。 法典の統一 現行商法の「第2編会社」、有限会社法、商法特例法などの特別法をまとめて1つの法律にしてあります。 枝番の整理 度重なる改正による、条文の枝番(たとえば「280条ノ3ノ3」)をなくして整理しています。 用語の整理 ■変更された用語(内容は現行法と同一) 「委員会等設置会社」⇒「委員会設置会社」 「営業報告」⇒「事業報告」 「営業の譲渡」⇒「事業の譲渡」 ■新設された用語 「合同会社」「持分会社」「会計参与」 ■ 内容が現行法と異なる用語 「公開会社でない会社」「公開会社」 *「公開会社でない会社」 発行する全部の種類の株式について、その譲渡につき承認を要する旨の定款の定めがある株式会社 → 現行商法の譲渡制限会社 *「公開会社」 会社の承認を得ずに自由に譲渡ができる株式を1株でも発行している会社 → 一部譲渡制限会社も公開会社ということになります。 * 公開会社であるか否かは、株式上場の有無とは関係ありません。 【実質的な主な改正点】 最低資本金制度の撤廃 今までの商法では、株式会社については資本金が1000万円、有限会社については300万円が最低必要でした。これが新会社法の新しい「株式会社」では、この最低資本金がなくなり、資本金1円からでも会社が作れることになります。(最低資本金制度は廃止になりますが、出資すべき額は定めなければなりません。) 起業のハードルが低くなり、ベンチャーなどの起業促進が期待できるでしょう。 また、「発起設立」の場合は、設立の際、資本金の保管証明は不要とされ、銀行の残高証明で足りることになりました。(会社成立後の新株発行の場合も同じ) この他にも、現物出資を行う際に必要な検査役(裁判所が選任する)の調査を省略できる要件が緩和されていたり、事後設立の検査役による調査を不要にしていたりという改正がなされています。 これらの改正により、これまでより、会社設立にかかる時間が大幅に短縮されるでしょう。 * 現物出資→金銭以外の財産をもってする出資 * 事後設立→会社成立2年以内に、資本の20分の1以上にあたる対価で、会社成立前から存在する財産を譲り受ける契約 機関設計の多様化 現行法では、株式会社の機関設計(株主総会、取締役会、監査役等)については、会社の規模(資本金・負債)により、法が一律に機関設計を強制し、会社の選択可能な機関設計は非常に限られています。 しかし、会社の規模とその機関設計とは必ずしも直結するものではありません。 そこで、新会社法では、機関設計については、最低限のルールのみを定め、当該ルール以外の部分については、各会社が当該会社の実態に応じ、自由に機関設計を選択できるものとされています。(全部で39通り) これからは同じ株式会社であっても、超ビッグカンパニーから株主一人、取締役一人、資本金一円の会社まで、バラエティーに富んだものが含まれることになります。 有限会社制度の廃止 現行の有限会社法は商法特例法と共に、新会社法に集約され、有限会社の設立は不可能になります。(ただし、既存の有限会社は新会社法施行後も継続できます。) その代わり、株式会社の中に取締役が一人といった従来の有限会社の機関設計が認められることになります。 既存の有限会社は、そのまま有限会社として存続するか、それとも株式会社へ移行するのか、のどちらかを選択する事になります。 会計参与制度の創設 新会社法では、「会計参与」という新しい制度が創設されます。 会計参与は取締役と共に、計算書類を作成する機関であり、公認会計士・税理士(それぞれ法人も含める)が携わります。 設置は任意ですが、監査役を置かない中小会社では、決算書の信頼性を高める制度として利用が期待されています。 株式制度の見直し 新会社法では、現行の株式制度が大幅に見直されています。 例えば、特定の種類株式に譲渡制限を付けることが可能になります。 また、公開会社でない会社(株式譲渡制限会社)では、議決権制限株式の発行限度規制(現行法では発行済株式総数の2分の1を上限)が廃止されます。 株券の不発行 現行法においては、株式会社は、原則として設立後又は新株の払込期日後に遅滞なく株券を発行しなければならないものとされています。 ただし、定款によって、株券を発行しないものと定めることができるとされています。 新会社法においては、さらに株券の廃止へ一歩進み、株券は、定款の定めがある場合に限って発行することができるものとされ、株券を発行しないのが原則になりました。 株券が発行されている場合、株式の譲渡は株券の交付により成立し、第三者に株主である事を主張(対抗)するためには株券を持っていることが、会社に株主である事を主張(対抗)するためには株主名簿の書き換えが必要です。 株券が発行されていない場合は、株式を譲渡する旨の意思表示があれば譲渡契約は成立し、第三者や会社に株主である事を主張(対抗)するためには、株主名簿の書き換えが必要です。 剰余金分配の見直し 現行法では、決算期を基準として定期的な配当がなされますが、これでは、会社に利益を留保するか、株主が配当を得て当座の現金収入を得るかにつき、株主の意見を反映する事ができません。そこで、新会社法では、剰余金を、配分可能額の範囲内であれば株主総会の普通決議で、いつでも配当する事ができるように改正されました。 類似商号規制の廃止 現行法では、他人が登記した商号については、同一市町村内において同一の営業のために、同一の商号を登記する事ができないとされています。 この規制は、既登記商号に一定の保護を与える効果を有していますが、企業の活動領域が広域化している現在においては、その保護効果は薄れ、むしろ、迅速な会社設立手続きの阻害要因となっています。(設立の際に、法務局で類似商号調査、目的相談が必要です。) そこで、新会社法では同規制は廃止されました。 ただし、同一商号、同一住所の登記はできないこととなっています。また、商号の不正使用については、不正競争防止法等により現行と同様の回復措置をとれるようになっています。 合同会社 新会社法においては、新たに合同会社の設立が可能になりました。 合同会社とは、出資者の全員が有限責任社員であり、内部関係については民法上の組合と同様の規律が適用される会社です。 社員が有限責任しか負わないため、配当規制や債権者保護手続きについては株式会社とほぼ同様の規制を受けることになります。 機関設計や社員の権利内容等については、既存の合名会社(無限責任社員のみ)や合資会社(無限責任社員+有限責任社員)と同様に、広く定款自治に委ねられています。 ちなみに、合同会社、合名会社、合資会社を併せて「持分会社」と呼びます。 * 有限責任社員→出資の限度においてのみ責任を負う社員 * 無限責任社員→自己の全財産をもって、会社の債務の責任を負う社員 * 民法上の組合と同様の規律→原則として、社員全員の一致で定款の変更、その他会社のあり方の決定が行われ、各社員が自ら会社の業務執行に当たるという規律
VOL.2では、株式会社の機関、有限会社はどうなるのか?等について、さらに詳しく説明していきたいと思います。 |